ハッピーネットのblog

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皆さんこんにちは

     
2023715日~17日の3日間 愛知サマーセミナーが開催されました。

ハッピーネットは、3つの講座の担当し、延べ40名の参加がありました。高校生が最も多く、父母会、一般市民の方々が参加されました。このブログでは、これらの講座についてご紹介いたします。

(掲載写真は受講者から許可を得てアップしております) 




               本日の内容 

1. 愛知サマーセミナー2023

  1)愛知サマーセミナーとは

  2)ハッピーネットがサマセミに参加した経緯

  3)会場について

2. 講座の紹介  

   12時限目:「がんになっちゃつた看護師の七転び八起き」

   23時限目:「音楽と小説を好む生物学者による遺伝子の話」

   3) 4時限目:「人と共存するロボット パロ」

3. 北村俊雄先生を囲む会

4. もしバナゲーム

   1)もしバナゲームとは

   2)ハッピーネットでのもしバナゲームの活動紹介

5.
最後に



愛知サマーセミナー2023

1)愛知サマーセミナーとは

  愛知サマーセミナー(以下、サマ1セミ)は、20年以上続いている地域市民と学校が結びついた市民参加型セミナーです。「誰でも先生になれる」「誰でも生徒になれる」「無料で学べる」などをコンセプトに多くのボランティアに支えられて開催されています。今年は、約60名の豪華講師による特別講座と市民や生徒による1000以上の講座が開かれました。

詳細は、サマセミのプログラムとHPをご覧ください。

↓↓↓

http://www.samasemi.net/pdf/2023samasemi.pdf




2)ハッピーネットがサマセミに参加した経緯
  ハッピーネットは過去のサマセミで笑み筋(えみきん)体操などの講座を開いたり、特別講座としてパロの開発者の柴田崇徳先生をご紹介したりしてきました。今年は、ハッピーネットの特別顧問であり、神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター長・東京大学名誉教授の北村俊雄先生を特別講座に紹介させていただきました。そのご縁から、ハッピーネットとして2つの講座を開講することになりました。

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アザラシ型ロボットパロのことを知りたい方へ↓↓

  

 
 開催決定の通知をうけてから当日の運営まで入念な打ち合わせをしました。当日「参加できるよ!」とハッピーネット会員からもボランティアとして参加があり、合計9名のボランティアスタッフが3つの講座を支えてくれました。写真はzoomによる打ち合わせの様子です。


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3)会場について

 今年は、高蔵高等学校・中学校、名古屋大谷高等学校、名古屋市立大学(滝子キャンパス)の3つの会場で開催されました。私達の会場は、名古屋大谷高等学校でした。  


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 校門をくぐり教室に向かう途中、高校生の元気な笑顔をみると、自分まで学生に引き戻される感覚にわくわくしました。(半世紀も前なのに!)

 

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.講座の紹介

 12時限目:「がんになっちゃつた看護師の七転び八起き」

    講師:ハッピーネット理事 那須裕子氏(もしバナマイスター)    

   まずは、「那須裕子」が何者なのかご紹介します。

 2年前に定年を迎え、現在再雇用者として稲沢厚生病院にしがみついています。職種は看護師ですが、勤務部署は医療安全管理課という医療事故やヒヤリ・ハットを相手に仕事をしています。近年では新たに「新型コロナウィルス」への対応までする事になり、目まぐるしい毎日を送っていました。

そんなある日、自分の身体に異変を感じ検査したところ、なんと大腸にがんが見つかる始末。しかも肺へ多数の転移というおまけ付。学生時代の通知表でもなかなか「4」はお目にかからない那須でしたが、(何せ勉強嫌いでしたので・・・)この度は「ステージ4」を頂く事になりました。

 大腸がんはすべて切除できましたが、肺の転移については日本中の医師に聞いても「抗がん剤しか治療方法はないと言われるよ」と複数の医師からお墨付きをいただき、仕方なく抗がん剤を受ける事になりました。そこからが本当の苦行の始まりだったのです。長年看護師として多くの患者さんと関わったはずなのに、こんなに治療を継続する事が大変だとは全く想像できませんでした。

 常に頭には「死」が離れず日常生活を送っていましたが、それでも楽しくやっている自分を見て、「どうせがんになったのなら、人様のために何かできないか。自分の経験を無駄にして死にたくない」と模索しておりました。そんな折り、このセミナーのお話をいただきました。


補足①

 
那須さんは、日総研出版の「エンドオブライフケア」のWEB版で、がんと告知されてから、治療や日常生活の整え方などについて5回の連載をしました。笑いあり、涙あり、勉強になりととても好評でした。

エンドオブライフケア

補足
  那須さんががんの告知を受けてから、大阪のもしバナマイスターさん達が、那須宅に集まって、もしバナゲームを開いてくれました。その様子は、NHKのハートネットTV2021526日に放映されました。写真は撮影風景です。

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 さて、本題に戻ります。

誰も来てくれなかったらどうしようと思いながら教室に行くと「時間前から高校生が待っているよ」との事。緊張MAXになりながら講義の準備にとりかかりました。

 講義が始まる前に、堀代表よりハッピーネットについての紹介や笑み筋(えみきん)体操アドバンストインストラクターである中村智栄による笑み筋(えみきん)体操を行い、講師も受講者もウオーミングアップ! 


0001_xlarge←中村さんによる笑み筋体操

 

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那須さんの前半の講義の様子(上着の色に注目!!)

  講義の前半は、自分自身ががんになった事を通して、がんになって気づいたこと、辛かったこと、そんな中でも楽しく過ごすコツなどお話しました。またがん患者さんに「聞いてみたいけどなかなか聞けない事」についてもふれ、本人の気持ちや家族の気持ちを伝えました。


  
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↑↑後半のもしばなゲームの時は、もしばなTシャツに着替えました。

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司会は、中部大学教授の堀井先生(左)とハッピーネット代表理事の堀(右)
後半はもしバナゲームを行いました

 さてさて、今回のもしバナゲームの反応はどうだったでしょうか?
 参加者は高校生・父母、一般の方で、もしバナを経験した人も初めての人も背景は様々です。日常で自分が半年で死ぬ事など考えたことはそうそうある事ではないので、すこし戸惑いもあるようでしたが、自分が残された半年に何を大切にしたいのかを真剣に考えていました。今までの自分を振り返り、これからの人生の歩み方に何かヒントがあったようですよ!


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カードの説明中    


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  受講後には「改めて楽しく生きることの大切さを学びました」「がんについて悪いイメージしかなかったが、その上でどうするかなど知れて良かった」「人生について病気について考えるきっかけとなりました。」と感想をいただきました。また個別では「今まで両親に一杯迷惑かけたのに感謝を伝えた事がなかった。今まで大切に育ててくれたことに感謝をして、家に帰ったら伝えます」と胸がジーンとするコメントも頂きました。(自分が子供に言われたら涙が止まらないかも・・・)

短い時間でしたが、とても素敵な時間となりました。



2)
3時限目:特別講演「音楽と小説を好む生物学者による遺伝子の話

   講師:神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター長・東京大学名誉教授 北村俊雄氏
(ハッピーネット特別顧問)


当法人は、昨年から、北村俊雄先生を小説とバンド活動(バンド名:negative selection)の面で「推し活」しており、今年度から特別顧問になっていただきました。この特別講座も、研究の話だけでなく、小説の紹介とバンドのオリジナル曲を流してくださいとお願いをいたしました。このような無茶なお願いを、軽やかにかなえてくださった北村先生に改めて、今後も推していこうと誓いました。

ところで、3つの講座のうち、北村俊雄先生の講義が一番人気で、立ち見もでました。さすがです!! なお、小説とバンドのことは、後ほど紹介させていただきます。

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北村先生の講義風景
遺伝子研究の歴史とご自身の研究経緯を軸に、学会でライブ演奏をした話や、海外での学会参加の際の風景写真、研究者間での音楽の交流、小説の舞台に絡めた話などを、とても自然な流れで、楽しそうに話をしてくださいました。先生の楽しそうな表情を見ているだけで、こちらも幸せな気分になりましたよ。何人かの方が、「北村先生の生きざまは、今後の自分の参考になった」と言っていたのが印象的でした。個人的には、「研究対象を好きになること」との言葉がとても心に刺さりました。アザラシ型ロボット・パロが好きすぎて、社会実装活動だけでなく、研究にも手を出しているので、「それでいいよ」と言っていただいた気がして、とても嬉しくなりました

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2010国際免疫学会でのライブ風景(昼間リハーサル)

 アンケートのコメントを紹介

・遺伝について、DNAについて楽しく知れました

・先生の生き方が面白い。興味のある事が似ていて生きやすかった。

・先生の趣味などについての話が面白かったです。

・自由が一番 感動です

DNAのことがよくわかりました

・やはり研究者は研究を楽しまなくてはと印象付けられた

・幅の広い話を聞くことができて楽しかった。

・難しい話もあったが、さらに知識を深めたいと感じた。


  北村先生の講義を聞いた高校生が、先生の生きざまに影響を受けて、自由に羽ばたいていって欲しいものだと思いました。
補足①
処女小説「17秒の向うに」:本の帯の「何かを失ったと感じているあなたに・・ 前に進むために捨ててきたものを、再び取り戻そうとするあるクリエーターの物語」のフレーズが大好きです。次の一歩を踏み出したいと思っている方に読んでいただきたい1冊です。

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アマゾンで1100円で購入できます。
Amazon.co.jp: 17秒のむこうに : 北村 俊雄: 本

補足②
Negative selection(バンド名)

ほとんどのメンバーが現役の免疫学者で、東大、京大、理研をはじめとした日本の頂点の研究者たちによるプログレッシブ・ロックのバンドです。NHK『ガッテン!』の1000回記念に登場し、『リンパ節ひとり旅』が披露されました。この曲は、リンパ球がリンパ節を巡りながら、病原体との戦いに向けての準備をし、やがて病原体との戦いの現場へ出発する決意を歌ったもので、1番はT細胞、2番はB細胞を表現したものだそうです。

(2) 【Negative Selection】リンパ節一人旅 - YouTube

北村先生はドラムを担当するだけでなく、作詞もされます。Epilogue〜夏の終わりに〜という曲は、北村先生の作詞ですが、大好きな曲のひとつです。



なお、CDは下記サイトから1100円で購入できます。
Negatively Selected : Negative Selection | HMV&BOOKS online - NSS-1


Negative selection公式サイト:Welcome to Negative Selecton – The band you`ve never seen before. (negativeselection.jp)



3)4時限目:「人と共存するロボット パロ」
       ハッピーネット理事 岩橋美智代氏

  ハッピーネットでパロを語らせたら右にでる人はいないと言われている岩橋さん。岩橋さんの家には「まめ助」と「くるみ」の2頭がいます。とくにまめ助は、悲しいときにそっと寄り添ってくれる、イケてる男の子ですよ。本当なら会場でパロ愛をたっぷり語っていただきたかったのですが、所用のため当日参加が難しくなり、「岩橋さんの音声付スライド出演」で行う事に決定! 「代打那須!」という予定もしましたが、岩橋さんの声でパロ愛を語らずして、何が伝わるのだと言うことで初の試みに挑戦です。とはいってもリハーサルなしのぶっつけ本番でうまくできるかドキドキです。しかし岩橋さんの声が流れ始めると柔らかくゆったりとしたまさにパロに癒やされているかのようでした。


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←岩橋さんの音声付きスライドと
 進行役の那須さん。
 今度は、パロTシャツを着ています。







  講義の後はまちに待ったパロとのふれあい体験です。最初は恐る恐るパロを触っていた受講者の皆さんでしたが、あっという間にパロを抱っこしはじめ声をかけていました。受講者の方の顔が笑顔になり笑い声や会話が弾み皆さん楽しそうでしたよ!
パロの事を知っている方も初めて知った方もいましたが、今後機会があればパロについて紹介したいという意見もいただけました。


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 ↑ハッピーネット特別顧問で、
名大予防医学教授の若井先生も駆けつけてくれました


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←男子高校生も興味津々










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パロのしゃちほこポーズ
1体だとできなかったパロも、他のパロがいるとなぜかできるようになるんです。→




アザラシ型ロボット・パロについて知りたい方へ
 月2回 パロハンドラー研修会を、ZOOM・無料で開催しています。講師はハッピーネット代表理事の堀が担当します。開発者の柴田崇徳博士が司会を担当します。質疑応答を含めて2時間の講座です。
申し込み↓↓↓



3. 北村俊雄先生を囲む会

  熱い1日が終わったあとは、大谷高校近くにある「トリックオアトリート」というお店で、美味しいスイーツを頂きながら、「北村俊雄先生を囲む会」を開催しました。12名の参加者で店内はほぼ貸し切り状態。みなさん、マスターのこだわりのスイーツをオーダーしました。


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  北村先生はとても気さくな方で、お仕事の話やプライベートな事(小説・バンド活動)もユーモアたっぷりにお話下さいました。ハッピーネットの特別顧問として自らパロTシャツもお召しになり、ばっちり写メにもおさまってくださいました。

 


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←那須さんが産み出した「三密君」















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笑み筋(えみきん)体操にこちゃんマーク→






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←北村先生の隣は、ハッピーネット理事で、愛知淑徳大学教授の加藤先生です。


 いつまでも北村先生とのこの時間を過ごしたかったのですが、先生もお忙しい予定を割いてお越し頂いておりご無理も言えず、囲む会を閉じさせて頂きました。パロTのままタクシーに乗られ、手を振りながら喫茶店を後にされた北村先生!きっとご帰京される新幹線の中でも広報活動をされた事はいうまでも無いでしょうね。


4. もしバナゲームについて
  米国発祥のこのゲーム。日本ではiACPが日本各地で普及活動を行っています。私もここでで研修をうけて「もしバナマイスター」に認定されました。愛知県で初のマイスターなんですよ。私の所属するハッピーネットでは今回のサマセミ以外でも色々な場所で「もしバナゲーム」を行ってきました。(もし体験したいと思われた方は、ハッピーネットまでご相談ください) 


 

72844593_1506177939530614_8834673210189414400_n←過去に開催したハッピーネットのもしバナゲーム

 
人生の最後に自分はどうありたいか・・・。とても大切な事だとわかっていてもなんとなく「縁起でも無いから」という理由で避けがちです。ましてやご自分の親や子供と面と向かって話すのは何かきっかけがないとなかなかできないものです。「もしバナゲーム」は、そんな難しい話題をカードゲームを通じて、考えたり話し合ったりする事ができます。
 

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←もしばなカードの一部









 
このゲームは「もしもあなたが治療困難な病気で生命の危機がせまって余年といわれたら・・・あなたは何を大切にしますか?」という条件と35枚のカードを使います。この35枚のカードには、重病のときや死の間際に「大事な事」として人がよく口にする言葉が書いてあります。自分が「そうそう!これこれ」と思うカードが手元に来る事もあれば、狙っていたカードを寸前の所で他のプレイヤーにスイッともって行って行かれる事もあり。自分の思うように進まないゲームはなにやら人生と同じように思えます。余命半年に自分が大切にしている事や新たな自分に出会える事もあります。また他の人の考えを知る事で自分の考えを深めるきっかけにものなるゲームです。



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←過去のもしバナゲーム。
受講生を見守る那須さんとパロ達。









5. 最後に
    最後までお読みいただきありがとうございました。
7月16日に開催したサマセミでのハッピーネットの取り組みを紹介させていただきました。このブログを読んで、もしバナゲームやパロ、笑み筋(えみきん)体操に関心を持たれた方は、ぜひハッピーネットHP「お問い合わせ」フォーマットからご連絡ください。
 そして、受講してくださった皆様、貴重な機会を下さったサマセミ実行委員の皆様、講義運営を担ってくれたボランティアの皆様に心よりお礼を申し上げます。














アバターこんにちは。ハッピーネット代表理事の堀です。
 2022年11月13日から始まったパロを使った火星アナログ・ミッションによる
「隔離空間での心理的実験」が11月25日に終了しました~。


はじめに 
 この実験は、火星砂漠研究ステーション(MDRS: Mars Desert Research Station)というアメリカユタ州の砂漠の中にある火星協会(the Mars Society)が管理・運営する施設で、6名の女性クルーによって実施されました(写真)。
 2022年11月12日(日本時間)にパロの開発者の柴田崇徳博士(国立研究開発法人産業技術総合研究所)が実験開始についてアメリカのコロラド州でオンライン会見を開き、12日から14日にかけて各種マスメディアで紹介されました。ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか??
 ニュースをご覧になった方から、「なぜパロが火星に行くの?」とか、「唐突な話ですね」、「パロが火星に行って何をするの?」などの意見をいただきました。このブログの記事を通して、これらのご意見や質問に答えられたらと思っています。
中日新聞
←2022年11月12日中日新聞より

記者会見には、私やハッピーネットのパロ・トレーナーらもオブザーバーとして参加したんですよ~。







  この記事を書くにあたって、MDRSのHP(MDRS HP)を覗いたところ、11月25日付けでクルーによるミッションサマリーが掲載されていました。レポートでは、パロの好意的な感想が書かれていたので、うれしくなりました。 
 このブログでは、パロの実験のことを紹介しつつ、より深く理解していただくために、下記の目次に示すように、火星探査のこと、アナログ・ミッションのことなども含めて紹介したします。

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←MDRSのHPより


今回のアナログミッション「クルー268」の
6名の女性隊員。
女子会のような雰囲気で楽しそうですね。





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←このミッションのロゴ。かっこいいですね。
MDRSのHPより





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Ⅰ.パロの有人火星探査に向けての実験~アナログ・ミッション
Ⅰ-1. アナログ・ミッションって??
 皆さんは、アナログ・ミッションという言葉をご存じでしたか??
ここで使う「アナログ(analog)」とは、アナログ時計やアナログ人間のように、デジタルと対比させた意味ではなく、「類似」とか「相似」の意味なんですよ~~。知らなかったな~~(-_-;)(-_-;)
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 アナログ・ミッションとは、南極、海、砂漠、北極、火山などの過酷な宇宙環境と物理的に類似した場所に研究施設を設置して(上記写真)、宇宙に行った時ののさまざまな側面をシュミレーションするための研究活動のことなんです。
 これらは米航空宇宙局(NASA)や火星協会などが所有及び運営しています。今回のパロの実験は、アメリカユタ州の砂漠の中にある火星協会運営のMDRSで行われました。
 
火星の映像 パーサヴィアランス

 この写真は、実際の火星の映像です。地球の砂漠の景色とそっくりですね。下記のyoutubeからのスクショしました。2021年2月の火星着陸の動画です。とっても感動的です。
 火星着陸の実写映像!パーサヴィアランス

Ⅰ-2. アナログミッションはどんな実験をするの???
 火星や宇宙での生活に対するリスクと、リスクの検証や対策のための実験を、NASA HPのAnalog Missionsのページを参考にして下記にまとめました。パロの実験は、赤丸で囲んだ「隔離-閉じ込め」に該当しているんですよ~~。   NASA アナログミッション

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 パロの実験は、このような有人火星探査の計画に位置づけられていたことを知り、改めて実験の重みを感じています。

Ⅰ-3 有人火星探査で「隔離-閉じ込め」が問題となる理由
 長期間であること、地球との通信に時間がかかることなどが理由として挙げられます。
Ⅰ-3-1)長期間のミッション
 地球と火星の距離は、軌道の関係があるので一定ではないですが、平均約1億5800万マイルと言われています。距離だけ言われてもピンとこないのですが、片道180日~240日かかるようです。また、火星では2年間滞在するので、合計3年~3年4か月のミッションが想定されています。
 この期間、閉鎖空間で数名の隊員たち(最初は4名)で過ごすことになるので、隔離などによる孤独やストレスがたまりやすいです。メンタルヘルスが悪いと、仕事のミスにつながりやすく、宇宙空間の仕事のミスは生命の危機に直結しやすいので、対策は重要ですね。
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Ⅰ-3-2)通信上の問題
 地球と火星が最接近した時でも、光が地球と火星の間を移動するには3分2秒、往復には6分4秒かかるとのこと。3分2秒というと短いように感じますが、待つには辛い時間です。これでは、地球にいる家族や友人と会話をしようとしても逆にストレスが溜まってしまいます。
下記のサイトで、この約3分の時間を実感してください。

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←NASAゴダード宇宙飛行センター(Goddard Space Flight Center)の惑星科学者ジェームズ・オドノグエ(James O'Donoghue)製作:地球-月-火星に光が到着する時間のアニメーション

Ⅱ. そもそもなぜ火星??
   ところで、なぜ火星探査なのか、それも無人ではなく、有人火星探査なのでしょうか?
Ⅱ-1  太陽系における火星の位置
 まずは、地球と火星は近いということがあげられます。高校か中学で、太陽系の惑星として、水・金・地・火・木・土・天・海(冥)を覚えましたよね。下図で見てもわかるように、火星は地球の隣に位置します。火星は、地球よりも小さいんですね~~。
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←せんだい宇宙館HPより
せんだい宇宙館






Ⅱ-2 火星探査の背景や計画を調べてみました
Ⅱ-2-1)  火星探査の背景
 月に次いで火星が探査計画に上がったのは、火星が地球から最も近距離にある「生命の存在条件を満たした惑星(ハビタブルプラネット)」ということが大きいようです。
 臼井寛裕, 宮本英昭:次世代火星探査計画に向けて:探査史および将来探査計画, 地球化学 48, 221‒230(2014). 臼井 総説

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Ⅱ-2-2)火星探査の目的
 火星協会のHPを参考に下記のスライドにまとめました。ざっくり言うならば、科学的調査と人類の活動圏を広げることのようです。
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Ⅱ-3 火星探査計画の歴史は??
Ⅱ-3-1) 火星探査計画の推移

 火星探査の歴史は、今回、初めて勉強しました。想像以上に昔から計画されていたのですね~(Wikipedia 有人火星探査 有人火星探査
 1948年:ヴェルナー・フォン・ブラウンのグループ 火星への惑星間飛行への構想
 1989年:ブッシュ大統領(父)「月および火星の有人探査構想」発表。予算不足のため断念。
 2004年:ブッシュ大統領(息子)「宇宙探査の将来」を発表。有人火星探査の可能性を探る。
Ⅱ-3-2)  火星探査船のロードマップ(2018年時点) 
 2018年時点での火星探査船のロードマップとして、①2000年代の「水およびその痕跡の発見」、②2010年代の「ハビタブル(生命の存在)環境の理解」、③2020年代の「生命の痕跡の発見」が提示されていました(下図)。このロードマップに従って、現在も火星サンプルリターン計画や有人火星探査計画に向けて、着々と準備が進められています。
 なお、2000年代初頭まではほぼアメリカにより主導されてきたようですが、2005年のESA(欧州宇宙機関)による火星探査機「Mars Express」の成功を受け、国際協調の時代に突入したとのこと。ちなみに、2020年のアラブ首長国連邦の探査機「Hope」は、な、なんと
日本の種子島から打ち上げられたんですよ~。知りませんでした(-_-;)。UAE種子島から打ち上げ 
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臼井寛裕 「火星地下圏探査の科学的意義および戦略」:  日本惑星科学会誌「遊・星・人」第27巻(2018)4号の図に日本語訳を追記 臼井 火星探査歴史
  
Ⅱ-3-3)火星探査の最新情報
 2021年2月に火星探査車・パーサヴィランスが火星に着陸し、岩石などのサンプル採取を進めているようです。火星サンプルリターン計画が着々と進められていますね。また、5月には宇宙用ドローンが初飛行しました。地球と異なる大気や重力下でドローンを飛ばすのは大変なことらしいです。写真を見る限りは、地球の砂漠でドローンを飛ばしているだけのように見えますが。。

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←youtube宇宙最新チャンネル
【4K】火星着陸の実写映像!パーサヴィアランスが生命の真理を探る旅が始まる!Perseverance Mars landing footage
よりスクショ 火星着陸 


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←2022年4月宇宙ドローン初飛行
youtube First Video of NASA’s Ingenuity Mars Helicopter in Flight, Includes Takeoff and Landing (High-Res)よりスクショ
火星初ヘリコプター



 ところで、数年前まで2030年頃に打ち上げと言われていましたが、2022年3月28日に米航空宇宙局(NASA)のネルソン局長は、有人火星探査について「2040年までに人類が火星を歩けるようにするのがわれわれの計画だ」と述べ、延期が示されました。(人火星探査)やはり、予算の関係でしょうか? 

Ⅲ これまでのパロに関する宇宙関連活動
Ⅲ-1  パロを有人火星探査船に!!の原点
 パロの開発者の柴田崇徳博士がマサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所で動物型ロボットによるロボット・セラピーの研究のために「感情的人工生物プロジェクト」のリーダーとして出稼ぎに行っていた時(1995~1998年)の上司のRodney Brooks教授が、火星探査ロボットに携わっていたことから、「人類が火星に行くときには、自分が開発するセラピー・ロボットも同乗させたい」と夢を抱いていたとのこと。
 パロの第1世代は、1998年にMIT人工知能研究所で柴田崇徳博士が手造りし、発表されました。でも、若かりし頃の柴田博士、可愛いいですね~。
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←2022年11月14日に放映されたパロの実験開始についての日テレのニュースからスクショ
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 上記のRodney Brooks教授は、世界で初めて1997年に火星に送られて、多くの写真などを地球に送った無人火星探査ロボット・ローバー「ソジャナー」をNASAと共に開発し、また、お掃除ロボット「ルンバ」で有名なiRobot社の創業者です。凄い方なのですね~

Ⅲ-2  パロに関する宇宙関連の活動
 開発者の柴田博士は、JAXA(宇宙航行研究開発機構: Japan Aerospace Exploration Agency)の協力を得て、2006年に南極「昭和基地」での実験を皮切りに、宇宙関連の展示会での展示や講演をしたり、アンケート調査を実施したりしてきました(下図)。パロがアナログミッションの実験に選ばれたのは、パロの世界各国での臨床研究だけでなく、このような地道な努力があったのですね。
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Ⅳ. MDRSでのパロを使った実験について
Ⅳ-1-1 MDRSの生活環境
 MDRAには2001年から数多くの国際的なチームが訪れ、さまざまな研究を実施してきました。過去にMDRSでミッションをしたクルーたちがyoutubeに投稿した動画から、MDRSの外部環境や施設の様子などをスクショしましたのでご覧ください。
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 居住棟は2階建てで、2階に7つの隊員用の個室があり、ベッドと机、棚があるだけです。今回のパロの実験では、この個室にパロを置いて触れ合ってもらったそうです。ところで、火星では野菜を自給自足する計画とのことで、グリーンハブ(温室)では、野菜を育てています。火星には水があるとのことなので、それを使うのかなあなどといろいろ想像しながら動画を見ていました。
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上記の写真の出典先のyoutubeの動画です。↓↓
①MDRSでの隊員たちがどのような仕事をして、生活するのか把握するのに役立ちます。ボランティア募集
米国ユタ州火星模擬実験基地MDRSの施設案内:日本語吹替版
MDRS Crew 245による火星砂漠研究ステーションのツアー
②MDRSが設置されている砂漠環境を知るのに役立ちます。
MDRS - M.A.R.S Uclouvain 2022 - Tharsis Mission
③2014年には日本人クルーの参加がありました。
Team Nippon 米国火星模擬生活実験施Team Nippon

Ⅳ-1-2 MDRSでのクルーやボランティアの募集
 
MRDSでは、アナログ・ミッションの実験をするクルーやボランティアの募集しています。興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。MDRS募集
ボランティア募集

Ⅳ-2 パロを使った実験について
Ⅳ-2-1)実験の背景
 パロを使った実験を発案した人はペットを飼っているそうで、火星探査船にペットを乗せられないことから、パロを使うことを考えたそうです。下記の写真は、日テレのニュースのスクショです。
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 この話を聞いて、柴田博士著(2021年)が書いた論文のアメリカの看護師さんの事例を思い出しました(下記スライド)。彼は、コロナ患者さんの看護をしていました。このため、感染拡大を防ぐために、家族とペットを彼の実家に避難させ、彼は自宅でひとり暮らしを余儀なくされました。
 彼はやがて勤務終了後、自宅で極度の疲労感、ストレス、孤独感、抑うつ感、精神的苦痛を感じるようになったので、コンパニオンロボットを検討した結果、PAROを自費で購入しました。仕事から帰ってきてPAROと毎日接することで、精神的な苦痛が軽減されたとのことでした。
 火星探査のクルーはこの看護師さん同様、ストレスフルな環境で家族やペットと離れて暮らすことになるので、パロの効果が期待できそうですね。論文はこちらからダウンロードできます。柴田論文
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Ⅳ-2-2)実験の対象と方法
 この実験の対象は6名のクルーです(下表)。ベテランから学部学生でインターンをしながらエンジニアの修行中の人までいて、Ⅱ-2-2)火星探査の目的の「4.若者を育てる」に該当しているなあと思いました。国籍もアメリカ、イギリス、ブルガリアと国際的なチームでした。なお、下表の情報は柴田博士から頂きました。
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 パロを使うことで、隔離生活によるストレスや孤独がどのように変化するかを、下の図や写真の方法で、ウェアラブル・デバイス(スマートウォッチ)を使ってデータを採取し、行動記録と併せて分析がされます。既に調査を終えたので、どんな結果が出るかとても楽しみですね。
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 パロの評価は、Empatica社「EmbracePlus」で測定します。Empatica社はMITメディア研究所のスピン・オフのベンチャー企業で、EmbracePlusは、NASAなどから予算を得て「火星探査ミッション」のために開発され、受賞歴を持つ医療グレードのスマートウォッチです。
 脈拍数、脈拍数の変動性、IBI (心拍間隔)、皮膚温度、呼吸数、酸素飽和度、運動、休息、ストレス、およびその他のデジタル・バイオマーカーの同時モニタリングが可能だそうです。何千もの研究パートナー、機関、および患者によって使用されています。
empatica

スマートウォッチ

Ⅳ-3 ミッション中の様子
 下の写真は、開発者の柴田博士から提供されました。とっても楽しそう。

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Ⅳ-4 実験終了時のミッションサマリー
 11月25日付でミッションサマリーが、MDRSのHPのcurrent crew reportsのページに掲載されていました。パロに関する部分だけ下記に抜粋いたしました。ミッションサマリー
 なお、このレポートではパロの実験に興奮したということ、このデータは、将来のアナログミッションの研究をサポートするために役立つでしょうと記されていたことから、好印象な手ごたえを感じました。データの解析結果が楽しみですね。

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Ⅴ  パロを使ったアナログミッションの今後の予定
 この実験の結果は、2023年5月アメリカのアリゾナ州で開催される会議で発表されるそうです。また、実験はあと2回、ポーランドと南太平洋で実施される予定です。効果ありとされたら、いよいよ宇宙用パロの開発になります。どんな結果が出るか楽しみですね。

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おわりに
 今回、MDRSでパロの実験がされた背景には、火星探索計画や柴田博士の活動があったことを知りました。実験のニュースを聞いて、「なぜパロが火星に?」という質問に対して、このような背景があったからこそと胸を張って答えられそうです。
 また、この実験で、クルーは寝室でパロと触れ合いました。この方法を聞いて、そういえば、オーストラリアのMoyle ら(2020年の)が実施したRCT(randomized controlled trial)で、個室でパロと触れ合うというものがあったなあと思い出しました。こういった結果も、実験の方法に反映されているのでしょうね。
The Effect of Using PARO for People Living With Dementia and Chronic Pain: A Pilot Randomized Controlled Trial 
 あと2回の実験で良い効果がでて、パロが有人火星探査船に乗れることを祈っています。
アバター2
追記:neoさんの下記の2つのブログで宇宙用パロの話がされています。パロイベントでは、柴田崇徳先生が講演会の中で宇宙用パロの話をされたので、そのことも触れています。併せてお読みください。





会員限定記事なので、スクショを貼り付けておきます。↑↑
読売新聞12月24日夕刊




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